歯の神経を抜くとどうなるか知っていますか?
公開:2023/06/10 |更新:2023/07/10
歯の神経を抜くとどうなるか知っていますか?
歯科治療で「歯の神経を抜く」という表現を聞いたことがあると思います。
大前提として、歯そのものも歯の神経も抜かなくてよいのであれば抜かないに越したことはありません。
今回は歯の神経を抜くことについて知っていただき、虫歯の予防、早期治療の重要性をご理解いただけますと幸いです。
目次
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歯の神経とは
歯の神経は、専門用語で歯髄(しずい)と呼びます。歯の中心部に位置し、血管や神経繊維で構成されています。
歯の神経を抜くということは一般的にこの歯髄を取り除くことです。歯科医師から「歯の神経を抜く」という診断を受けた場合は、歯髄全体を抜くことを意味します。
歯髄を取り除き、空洞になった部分をきれいに消毒し、最後に薬を詰めます。これが歯の神経を抜く治療です。正式には抜髄(ばつずい)と言います。
歯の神経の役割
歯の神経は、歯の健康と機能に不可欠な役割を担っています。
歯に栄養や水分、酸素を運ぶ役割
神経の中の血管を通じて酸素や水分、カルシウムやミネラルなどの栄養を象牙質へ運んでいます。
歯に栄養が供給されることで、歯質は強くなり、頑丈で見た目もツヤのある健康な歯が保たれています。
感覚や痛みを脳に伝える役割
歯の神経は痛い、しみる、熱い、冷たいなど歯の周りや内部からの刺激を感知し、感覚信号を脳に送る役割を果たしています。歯になんらかのトラブルが起きた場合、痛みや不快感として異常を教えてくれます。
できれば感じたくない「痛み」ですが、「痛み」を感じるからこそ、虫歯や歯周病をはじめとする口腔トラブルに気付くことができ、早い段階で対処することができます。
防御機能の役割
歯の神経は、細菌に抵抗したり、歯に対する外部からの刺激に対して防御作用が働きます。
例えば、虫歯の細菌が歯の内部に侵入しようとするのを防御する働きなどがあります。
歯の神経の治療が必要な時
歯の神経は健康な歯を維持するために大切なものです。それでも神経を抜くことが必要になる場合があります。
重度の虫歯
虫歯が重症化して神経部分である歯髄にまで虫歯菌が達してしまうと、歯髄が炎症を起こして激しい痛みが生じるようになり、痛みを取るために神経を抜く治療をします。
虫歯が原因の炎症を放置していると、どんどん広がってしまうので、痛みを感じなかったとしても、中で広がっている場合は神経を抜く必要があります。
重度の知覚過敏
知覚過敏は強い噛みしめや歯ブラシの当てすぎ、加齢による歯肉の退縮などで、象牙質が露出している場合に痛みを感じます。
象牙質は神経部分である歯髄を包んでいるため、触れた時の刺激が神経に伝わりやすくなります。
知覚過敏は一過性の痛みですぐに痛みがおさまるため、神経を抜く治療をすることはほとんどありませんが、痛みがひどく続くなど、日常生活に支障をきたすほどの強い知覚過敏がある場合には神経を抜くこともあります。
歯の神経の壊死
細菌感染した歯を放置していると、歯の神経はやがて壊死してしまいます。虫歯だけでなく、打撲などが原因で神経の壊死が起こることもあります。
神経が壊死してしまうと、そのまま神経が腐っていき、口臭がひどくなったり、歯の色が変色したりします。そのまま根尖性歯周炎などの重度の炎症を引き起こしてしまう可能性もあるため、神経を抜く治療が必要です。
神経が死んだまま放置していると、細菌感染が歯の外まで広がり、歯を支えている顎の骨まで感染拡大する場合もあります。
歯に亀裂が入った時
歯が折れたり亀裂が入ったりすると、神経が露出し、感染や炎症を引き起こす可能性があります。
炎症を防ぐためには内部を清掃・消毒する必要があります。この治療の一環として、神経を取り除きます。
神経を抜くことで感染のリスクを軽減し、歯の保存を図ることができます。
歯の神経を抜くことで起こること
変色
神経を取ると血液が循環しなくなることで、歯に栄養を運んだり不要なものを受け取ったりする新陳代謝の働きがなくなります。そのため、リンパ管にたまった血液や古いコラーゲンが時間の経過とともに褐色〜黒色に変色していきます。
神経がある歯は、歯に十分な栄養が届けられることで、象牙質の色が維持され、半透明のエナメル質に透けて、健康的な白さが保たれています。神経がある歯は年齢とともにうっすらと黄ばみますが、神経を失った歯は次第に黒っぽくなり、明らかに他の神経がある歯とは色合いが異なってしまいます。
歯がもろくなる
神経がなくなると、象牙質に栄養を送ることができなくなり、歯の組織の新陳代謝がなくなり、枯れ木のようにもろくなります。
神経のある健康な歯は多少の衝撃に耐えることができますが、神経を失った歯はもろくなるので、硬いものを食べたり、強く食いしばったりすると割れたり折れたりすることがあります。食べ物を噛んでいるうちに少しずつ歯にヒビが入ってしまうこともあります。また、転倒などの外部からの衝撃でも簡単に折れてしまうことがあるので注意が必要です。
虫歯に気づきにくい
神経を取って治療をしても、また虫歯になってしまうことはあります。
神経が残っている歯では、痛みが生じるので虫歯が進行していることに気付くことができますが、神経を取った歯は、痛みを伝える神経が失われているので、虫歯が再発していても気付きにくくなります。
痛みがないということは、歯に異変が起きていても自分で気付けず、気付いた時にはかなり悪化していたというケースも少なくありません。
歯の神経を抜いた後に気を付けること
神経を抜いた歯は歯根が割れやすくなります。
特に奥歯の神経を抜いた場合は、ものを噛む時に神経のない歯に大きな力がかかると縦にひびが入って割れやすくなります。
神経を抜いた歯は、割れても痛みが出ないので気付くことが困難です。やがて歯根の周囲の組織に炎症がおこって腫れたり膿がたまります。
そこで気付くことができても、その時には歯を抜かないといけない状態になっている可能性が高いので、神経を抜いた歯にはむやみに力をかけないように、気を付けなければなりません。
また、咬み合わせをバランス良く調整し、神経を抜いた歯に負担が掛からないようにすることも重要です。奥歯が無い状態のままにしていたり、合わない被せ物や入れ歯の使用を続けると、咬み合わせに負担が掛かる原因になります。
神経を抜いた歯は、ご自身で異変に気付くことが難しいため、定期的なメインテナンスを欠かさず行う必要があります。
定期検診で虫歯の予防に努めるとともに、少しでも違和感を覚えたらすぐに歯科医院へ行くようにしましょう。
早期発見・早期治療が歯の寿命を伸ばすために最も重要です。
気になることがある方はお気軽に、今すぐにでも、まずはご相談ください。